■時代の精神
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傘貼り浪人 想像力ないの よくわかつたが 探究心 少しあつた気がする
プロレス 力道山 TVで少し観た 小学生のころ それ以来 プロレス 頭の片隅にも残らなかつた
「プロレス」編集部 配属
贔屓の前編集長に連れられ 興行先の大宮スケートセンターへ 新任挨拶 帰りにセンター内 公衆便所へ寄つた
背後に山が迫ってくる気配 すぐ隣で激しい放水の音 山は去つていく ジャイアント馬場であつた <プロレス初体験>であつた
「プロレス」に來る前 馬場さんと一度 会つている 「(月刊)ベースボール・マガジン」 巨人軍多摩川合宿OB會の取材 「鬼寮長」武宮二軍コーチを囲んでの宴 開催時間に遲れ 某ホテルの会場ドアを慌てて開けた そこに山があつた 山がそびえ 奧が見えなかつた ジャイアント馬場 先輩に混じり 末席で身を屈めてゐたが ドダイ 無理
宴もたけなは 酒も入り歓談 そのとき 「おーい 馬場 写真撮ろうぜ 娘がオレが巨人にゐたと信じてないんだ」 オレもオレも…… ジャイアント馬場<一緒撮影会>と化した
プロレス報道独壇場の東京スポーツが仕切る 全日本と新日本のソフトボール試合 西武球場 編集長 近場ゆえ出向く
新日本のダグアウトで弘報担當のFさんと歓談してから 多少 敷居が高い 全日本へ 一塁側だつたか そこに転がつていたソフトボールに手が伸びる 自然 馬場さんの前に持つていつて 「サイン お願いします」 元巨人投手に差し出した
大きな手に中 ソフトボール 野球ボールに見える 元巨人投手から渡されたサインボール それを見ていた全日本弘報担當のIさん 貴重ですヨ 「馬場正平」のサインは契約書だけです
巨人軍一軍時 風呂場で転倒 視力の急激な低下 「腦腫瘍」 東京大学医学部で手術 奇蹟的成功 恩義を感じ 献体を申し出る 遺体の献体契約書に「馬場正平」とサインした
ジャイアント馬場 訃報 共同通信社から原稿依頼あり 馬場さん 記者會見 いつも葉卷 プカ〜プカ〜 煙に卷く 初めて露わにして怒つた 記者会見 新日本のブッチャー引き拔き 馬場さんの そんな人柄を書ゐた
同じ釜の飯 食う者の同士 してはならいこと 馬場さん それ云いたかつたのではなかつたか 馬場さんに 云われたことがある 取材拒否の気配 「同じ釜の飯 食う者同士」 全日本と新日本 誌面 平等に扱うべきだ 馬場さん さう云いたかつた
同じ釜の飯 食う者同士のプロレス業界誌 業界誌から脱皮するため 週刊にした タイガーマスク(佐山聡)出現 プロレス・ブーム その熱量 業界誌では吸収できない
編集者の本分 時代の精神みたいなものと格闘し 時代を読み取ること
プロレス→週刊プロレス→格闘技通信→武道通信 編集士としてのロードマップ 傘張り浪人の伊勢物語だつたやも知れぬ
2023/03/25(土)  |
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