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時代の精神


傘貼り浪人 想像力ないの よくわかつたが
探究心 少しあつた気がする

プロレス 力道山 TVで少し観た 小学生のころ
それ以来 プロレス 頭の片隅にも残らなかつた

「プロレス」編集部 配属

贔屓の前編集長に連れられ
興行先の大宮スケートセンターへ 新任挨拶
帰りにセンター内 公衆便所へ寄つた

背後に山が迫ってくる気配
すぐ隣で激しい放水の音 
山は去つていく
ジャイアント馬場であつた
<プロレス初体験>であつた

「プロレス」に來る前 馬場さんと一度 会つている
「(月刊)ベースボール・マガジン」
巨人軍多摩川合宿OB會の取材 
「鬼寮長」武宮二軍コーチを囲んでの宴
開催時間に遲れ 某ホテルの会場ドアを慌てて開けた
そこに山があつた 山がそびえ 奧が見えなかつた
ジャイアント馬場 先輩に混じり 末席で身を屈めてゐたが
ドダイ 無理

宴もたけなは 酒も入り歓談 そのとき
「おーい 馬場 写真撮ろうぜ 
娘がオレが巨人にゐたと信じてないんだ」
オレもオレも……
ジャイアント馬場<一緒撮影会>と化した

プロレス報道独壇場の東京スポーツが仕切る 
全日本と新日本のソフトボール試合 西武球場
編集長 近場ゆえ出向く

新日本のダグアウトで弘報担當のFさんと歓談してから
多少 敷居が高い 全日本へ 一塁側だつたか 
そこに転がつていたソフトボールに手が伸びる
自然 馬場さんの前に持つていつて
「サイン お願いします」
元巨人投手に差し出した

大きな手に中 ソフトボール 野球ボールに見える
元巨人投手から渡されたサインボール
それを見ていた全日本弘報担當のIさん
貴重ですヨ 「馬場正平」のサインは契約書だけです

巨人軍一軍時 風呂場で転倒
視力の急激な低下 「腦腫瘍」
東京大学医学部で手術 奇蹟的成功
恩義を感じ 献体を申し出る
遺体の献体契約書に「馬場正平」とサインした

ジャイアント馬場 訃報
共同通信社から原稿依頼あり
馬場さん 記者會見
いつも葉卷 プカ〜プカ〜 煙に卷く
初めて露わにして怒つた 記者会見
新日本のブッチャー引き拔き
馬場さんの そんな人柄を書ゐた

同じ釜の飯 食う者の同士 してはならいこと
馬場さん それ云いたかつたのではなかつたか
馬場さんに 云われたことがある
取材拒否の気配
「同じ釜の飯 食う者同士」
全日本と新日本 誌面 平等に扱うべきだ
馬場さん さう云いたかつた

同じ釜の飯 食う者同士のプロレス業界誌
業界誌から脱皮するため 週刊にした
タイガーマスク(佐山聡)出現 プロレス・ブーム 
その熱量 業界誌では吸収できない

編集者の本分
時代の精神みたいなものと格闘し
時代を読み取ること

プロレス→週刊プロレス→格闘技通信→武道通信
編集士としてのロードマップ
傘張り浪人の伊勢物語だつたやも知れぬ
2023/03/25(土) 雨


不遇


十六段から 舞台 都に戻る
新キャスト 登場
主人公の親友 紀 有常{きのありつね}

有常 
文徳{もんとく}天皇の世継ぎの政争に絡む
いつとき 藤原北家を揺るがしかねない存在
有名人である

有常の妹・静子
文徳天皇 皇太子の頃 入内
帝(天皇)に即位したあと 更衣{こうい}になる
更衣と云ふの 更衣室ガカリではない
後宮の女官 女御{にょうご}の次位にあつて
天皇の衣をかえることをつかさどり
天皇の寝所にも侍した

静子 帝の最愛の女性となる
文徳天皇 静子が生んだ
第一皇子・惟喬親王{これたかしんのう}に
位を譲りたい

だが 藤原北家全盛の礎を築いた藤原良房
娘の明子 女御として入内
その皇子をゴリ押しで皇太子に推し立てた

惟喬親王が帝になつてゐたら
有常も 栄華に浴してゐたし
親友の主人公(業平)も 
ご相伴にあずかつたことだらう

そしたら 『伊勢物語』 書かれなかつたやも
不遇こそ 想像力の源泉やも知れぬ
傘貼り浪人 想像力ないの よくわかつた
2023/03/24(金) 雨


ゑびす


東下り 終点は十五段
主人公 陸奥國 信夫山{しのぶやま}(福島市)
人妻に出会ふ

平凡な男の妻なのに 尋常でない魅力
主人公 その謎めいた魅力に惹かれ 
あなたの心をみてみたい との意味の歌を詠む
人妻 喜びながらも
ゑびすの心 見られたらどうしよう

いまの世の訳
<ゑびすの心> 
田舎ぢみた無教養な心
見苦しい田舎女の心
田舎ぢみたやぼな心
違う

<ゑびす>とは蝦夷{えみし}
東北地方 岩城 亘理 信夫 牡鹿 栗原
大和朝廷 蝦夷勢とせめぎあつた地域

八世紀になり 朝廷によつて信夫郡となる
福島 白河関 勿来{なこそ}関 蝦夷との境界線
信夫 関所より北 関外の拠点であつた

後年 境界線 宮城の以北へ北上 信夫 同化も進む
伊勢物語 主人公の頃
蝦夷との戰ひも落ち着き 半世紀たつたころ

人妻 同化はしているものの 
服従してゐない 自らの文化を捨てない
異民族の血を持つ女
主人公 謎めいて見えた
いや ステキに見えた

羈旅歌{きりょか}歌で はじまった東下り
この最後の遍では 滑稽さも皮肉もない
歌も羈旅歌でない 都への思慕もない 
“社会的”問題で締めくくつた

伊勢物語 主人公 いや作者
ただ者ではない

差別=悪 意識過剰で
<ゑびす>を蝦夷と直訳しない いまの世の輩より
あつぱれである
2023/03/23(木) 晴れ


鄙{ひな}の魂


「東京へいくな ふるさとを創れ」
一九六〇年代の歌

伊勢物語の主人公
「京へいくな 鄙{ひな}(地方)をつくれ」
とは歌わなかつた
「をとこ」 東に向かつたのは
失意の逃避行だけではない

古のひと
京には<みやび>
鄙には<ひびな>
京には京の魂があり
鄙には鄙の魂がある
と考えたゐた

業平より少し のち
一条天皇の御代
某歌人 宮殿で口論 粗暴な振舞
天皇から「陸奥の歌枕見て参れ」と叱られる
鄙の地の魂に触れ すさんだ心をよみがえらせて来い
との意味

流刑 
鄙の魂に触れ
浄化させることが第一の目的だつたことを 
もう 吾ら 忘れてしまつた

忘れてしまつたが
東京から出て 
地方を創ろうとしてゐる者たち がゐる
鄙の地の魂 まだ残つてゐるか
鄙の地の魂に触れられるか
楽しみにしておるぞ
2023/03/22(水) 晴れ


絵本


最初に手にした絵本 の記憶
「ももたろう」でも「さるかにがつせん」でもない
雪の中を母親 幼き子の手を引く 赤子を胸に抱いてゐる画
その赤子の物語 源義経であらう

『源氏物語』 冊子になつたのは一〇〇五年前
伊勢物語 すでに絵画化されてゐた
以来 各世にわたり 江戸の世までも
物語の印象的シーンが絵巻 屏風などに
描きつづけられてきた
<絵本>も数多ある

たとへば
平安の世の読者と
江戸の世のの読者が会つて
たとへば
六段の逃避行“芥川”の絵の話をしたとする
伊勢物語 極地のドラマティックな見せ場
主人公の男 お妃候補の相手と恋をする
二人の間 引き裂かれること知つてゐる
駆け落ち
が 当然 窮地に陥る
ふたりが落ち行く末 辿りついた河の名 芥川

平安の世の読者 江戸の世のの読者
感情移入 共感できた

伊勢物語 受験には欠かせないが
“芥川”の絵の話をしたとしても共感できない
いまの世の吾ら
なぜ
2023/03/21(火) 晴れ


武道通信かわら版 配信日


むかしのはなしだ
「(月刊)ベースボール・マガジン」 編集士のころだ
甲子園大会
三塁打 打ち 三塁ベース上 握りこぶしの片手を上げ
ガッツポース
高野連 お咎め 二度とするな

諸行に常はない
無常観について書ゐてみた
2023/03/20(月) 晴れ


オマージュ


伊勢物語 七段から十五段
失意の旅 
飛ぶ鳥を落とす藤原家北家{ほっけ}に拒まれた恋
都にいづらくなつた主人公 東國への旅

古{いにしえ}から<貴種流離譚{きしゅりゅうりたん}>
とされた物語がある
身分の高い人 属を離れ 旅をし
未知の土地に入る

だが この主人公 「をとこ ありけり」
意図的に織り込んでゐる
万葉集へのオマージュ 尊敬 敬意

万葉集 旅にまつはる
「羈旅歌{きりょか}」とされるジャンルがある
羈旅とは<行旅>
自分の居場所 離れ移動する
いまの世の<レジャー>に近い のだが
古の旅 移動手段限られ 移動は日中しかない 
食事も満足にできない
それゆゑ
古の旅人 
常に旅先から家を恋しく 何を見ても家を思ひ出される
心残りはまた 都に残してきた妻や恋人
旅先の名所にゐても なお都の伴侶に想いを馳せる

作者らしき主人公 
万葉集のスタイルを伊勢物語に持ち込んだ
意図的に
和歌ルネッサンス・ブームに シンボリックな万葉集
意図的になぞる

平城天応の孫 
業平の歌人をしてのイメージがいつさう引き立つ
平安の世の読者 在原業平と信じてゐた

『源氏物語』の紫式部も
『更級日記』の菅原孝標女{すがわらのたかすえ の むすめ}も

2023/03/19(日) 晴れ


母親の役目


叔母たち まだ若かかつたころ
祖母 夕暮れ 家の前に立つ
叔母が門限過ぎても まだ帰らぬからだ


【むかし をとこ ありけり
東の五条わたりにいと忍びていさけり ……】
(伊勢物語 <五段>)

主人公の男 ごく秘密の逢瀬をしてゐた
門から入らず 悪童どもが壊した 崩れた塀から通つてゐた
通う数 頻繁になり ついにバレた 
で 番人に見張らせた

男は毎晩 出かけたていくものの 逢うことはできない
それで 例によつて歌を詠むわけだが それは省略
この女 のちに宮中に入り 清和天皇の后{きさき}になる
藤原高子{ふじわらのたかいこ}
世評を気にして兄の二人が警護をつけた

この五段は四段につづけて語つてゐるようだが
四段に出てくる五条の大后{おおきさき}とは 叔母の順子
女あるじととして 二人の間を隔てたり 許したりする役

主人公の男 愛読歌集 『万葉集』
【筑波峰{つくばね}の をてもこのもに 守部{もりべ}すゑ
母い守れど 魂{たま}そ合ひにける】
(万葉 3993)
筑波山のあちら側 こちら側に山野番人を置くように
母親は見はつているけれど
本人どうしの心が引き合って 逢いとげてしまいました
男 この歌 念頭にあつた

古の村には この歌の背景を語る物語が 多々 あつたのであろう
若い女のところへ男が通ってくると
それを防いだり 認めたやつたりするのが
母親の役目

叔母たち 祖母が決めた男に嫁いだ
“泣く泣く”花嫁 家を出た
後年 叔母たち
祖母が決めてくれた男でよかつたと
語りあつてゐた
2023/03/18(土) 曇り


ストーカーの恋歌


月やわらぬ 春やむかしの春ならぬ
わが身ひとつは もとの身にして
と詠みて 夜のほのぼのと明るに
泣く泣く帰りけり
(伊勢物語 <四段>)
  
月は むかしのままの月ではないのだらうか
やつぱり むかしのままの月だ
春も またむかしのままの春ではないだらうか
やつぱり むかしと変わりない春だ
ところが 人の上では 自分の身ひとつはもとのままで
あの女{ひと}の境遇は すつかり変わつてしまひ 
逢ふことできない
さう詠んで 夜がほのぼのと明けるころには
泣く泣く帰つてきた

男が「泣く泣く帰りけり」とは女々{めめ}しい限りだ
と思われるが 古の心の内と いまの世の 
情念→心に湧く感情や心に起こる思い
まつたく違ふこと 知らない

怒るときは 心底 憤{いきどおり}
泣くときは スサノウのように「青山は枯木なすまで」泣く

「むかし 男ありけり」の男
“通い恋愛”でストーカーではないが
いまの世のストーカー諸君
恋歌の一つも詠んでみなされ
あきらめきれるやもしれぬ
2023/03/16(木) 晴れ


抱かれたい男


西の京に女
初恋の女{ひと}
いずれ皇室に嫁ぐお妃候補
とは誰であつたか

西三条殿{どの}と呼ばれてゐた
右大臣・藤原良相{よしみ}
二人の娘がいた
多賀幾子{たがきこ}と多美子{たみこ}
長女の幾子 <西三条女御>と呼ばれてゐた 
その女{ひと}であつた
のち 文徳{もんとく}天皇の女御{にようご}となつた
女御とは
天皇の寝所に侍した高位の女官
主に摂関の娘がなり 平安中期以後は女御から皇后を立てるのが例となる
身分違いの恋であつた

『伊勢物語』 時代舞台は平安の世 前期
主人公の「男ありけり」は
実在した在原業平{ありはらのなりひら}をモデルとして語られる
とは云へ 歴史上の在原業平ではなく<業平ならぬ業平>
ゆえに作者 在原業平の私小説とされる説 通説となる

心が純粋で 外来(唐風)の教養より 伝統的な和歌を愛し
権威におもねず ひたすら恋にこがれる
当時の理想的な男の姿であつた

紫式部 この「男」に抱かれたかつたではあるまゐか
それが『源氏物語』 書かせたのではなゐか

「抱かれたい男」ランキングとやら
流行つたのは いつごろからであつたらう
キムタクが常に一位であつた記憶残る

「抱かれたい女」ランキングとやら
流行るのも さう 遠くない
諸行に常はない
さりとて これ無常観と違ふ
2023/03/15(水) 晴れ


初恋


【むかし 男ありけり
奈良の京は離れ
この京は人の家まだ定まらざりける時に
西の京に女ありけり
その女 世人にはまされりけり
その人 かたちよりは心なむまさりたりける
ひとりのみもあらざりけらし
それをかのまめ男 うち物語らひて 帰り来て
いかゞ思ひけむ時はや よひのついたち
雨そほふるにやりける】

(伊勢物語 <二段>)

狩りに行った主人公の男
前段の舞台 旧京(奈良)を離れ 
新しい都の女に想ひ寄せ アプローチ
語り合うだけだつたか “ヤッタ”か定かでないが
帰つてきた
雨がしとしと降つてゐた
そこで詠んだ歌
【起きもせず寝もせで夜を明かしては
春のものとて眺め暮し】

たつた二百字あらず つい見過ごさてしまうが
作者 この話をここに置いた 大きな意味があつた

【西の京に女ありけり】
西の京? つてなんだ
平安京 朱雀大路{すじやくおおじ} 中心に
東側→左京{さきよう} 西側→右京{うきよう}
右京 低湿地 洪水が多かった
貴族は左京の高台に集中 右京 三割四割 開発ままならぬ
ただし右京 一条から二条の西の京
高台に設けられた宮城に接近しており 水害避けられた

ここに住む階層 宮廷の中・級役人 貴族の親戚
そして愛人 
さすれば<西の京に女> 貴族の愛人
いやいや 実は
一段で元服した男が恋ひ焦がれた
いとなまめいたる女の一人であつた
初恋の女であつた
いずれ皇室に嫁ぐお妃候補であつた

作者 ままならぬ恋を重ねる主人公の悲運を
強調するため 伏線として彼の初恋をここで描ゐた

人は 男も女も 初恋を 
いくつも辿るであらう恋路の伏線となる
♪好きだよと云ヘずに 初恋は 
 ふりこ細工の心

*初恋 懐かしんでゐたら
 きのふUP失念
2023/03/14(火) 晴れ


禁色{きんじき}


【男男{をとこ}狩りに住{い}けり】
その折 
【いとなまめいたる女{おんな}はら住みにけり
この男 かいまみてけり】

こんな寂れた里に似合わない
美しい姉妹をみつける
男 気もそぞろになり 
着ていた狩衣{かりぎぬ}の裾を切つて
思いのたけのを うたいこめた歌を書き
すぐさま届けました
男は しのぶ草の乱れ模様を染めつけた
しのぶ摺{ず}りの狩衣を着ていました

詠んだ歌
【かすが野の若紫{わかむらさき}のすり衣{ころも}
しのぶのみだれかぎり知られず】
         (在原業平 新古今和歌集)
古文試験 この意味を答えよ
模範解答
<春日野の若々しい柴草の染め料から染め出した
狩衣のしのぶ草の乱れ模様
ちようどそのように
わたしがあなたに恋ひこがれて
その想ひをしのぶ心の乱れは
とどめなく深いのです>

紫式部ら同時代の“女子学生”なら
すぐ連想できる
かすが野=地名 若紫すり衣=草の名+色名+衣服

若紫 白い花なのに なぜ紫と呼ぶのか
根が紫色の染色原料になるからだ
さらに この紫草は貴重で数が少なく
この草が出す紫色で染めた布は
皇室か上流貴族の位 三位{さんみ}以上しか着用を許されてゐなかつた
いわゆる<禁色{きんじき}>

一世紀も下ると 「禁色勅許」
天皇側近のほか 四位・五位の一部の殿上人 禁色を勅許する

江戸の世 八代将軍吉宗 古色の江戸染めを許可
江戸紫 流行
歌舞伎「助六」鉢巻の色

東映 チャンバラ映画 鞍馬天狗の紫頭巾
紫の風呂敷 ないかな?
鞍馬天狗ゴツコして遊んだ

三島由紀夫に『禁色』 あつたな
禁色なき いまの世
からつぽで のつぺらぼうの
極東のイチ元経済大国
2023/03/12(日) 晴れ


通念

【むかし
男{をとこ} 初冠{うひかぶり}して
奈良春日{ならかすが}の里に領{し}るよしして
狩りに住{い}けり】
(伊勢物語 <一段>)

初冠=元服(初めて冠をつける)
領る=所領として治める
住ぬ=往く おもむく

≪昔 男が元服して 所領としてゐる
奈良の春日の里に狩りにいつたさうである≫

いまの世の女学生
「この男性は奈良の春日の里の地主で
たまたま 狩りにいつたんだらうなぁ〜」
これを 単なる字面をなぞると云ふ

これを “女子高校生”の紫式部が讀んだとすると
季節は初冬と すぐわかる
下々の罠 網 弓矢の狩りではない
狩り(鷹狩り)のシーズンだからだ

獲物の渡り鳥 飛来しはじめる頃
米の収穫後 作物を荒らさないため
雪が降りすぎず積もつてないころ

鷹狩のできる者
帝/親王/臣籍した者だけが許される
ロイヤルスポーツ

「この男の方 皇族の方なんだ 
奈良の春日に所領で 狩り=鷹狩り なんて
社交界で有名だつた あの人に決まつてる
先々代の天皇の政争トラブルがあつた昔の都に
その孫が成人したとたん乗り込むなんて
ただのダンディじやないわね

紫式部ら同時代の讀者なら
この一段から<男>の社会的階級 推察できたのみならず
男のモデルになつた有名人の実像まで想定できた

[通念]  いまの世と平安の世では 社会通念が違ふ
社会通念が違ふなかでも 江戸の世 あたりまで
色恋の [通念]だけは引きずつてきた
『伊勢物語』『源氏物語』 読み継がれた

いまの世の色恋の [通念]
『伊勢物語』『源氏物語』 遠くなりにけり
どうする 大河『光るの君へ』
2023/03/11(土) 晴れ


万葉の古{いにしへ}にかへれ


『古今和歌集』序文
「平城{へいぜい}天皇が侍臣{じしん}に詔{しょう}して
万葉集をえらばせなさつた」

「万葉集」 編纂したのは大伴家持
家持 藤原種継暗殺に関与したと云うことで
死後に罰を受け 「万葉集」もお蔵入り

桓武天皇 崩御→平城天皇 践祚{せんそ}
即 「万葉集」 解禁

平城天皇の孫 在原業平
あの『伊勢物語』 各段の冒頭
「むかし 男ありけり」
コレ 万葉集 十六巻 歌物語からのパクリ

むかし 娘子{をとめ}ありけり
むかし 老翁ありけり
むかし 壮士{おとこ}と美女とありけり

庶民的なショートストーリーに和歌が数種
『伊勢物語』 このスタイル踏襲

在原業平
万葉の古{いにしへ}にかへれ
この想ひで
「むかし 男ありけり」 綴りはじめる
2023/03/10(金) 晴れたり曇ったり


和歌ルネッサンス


「大和魂{やまとだましひ}」
『源氏物語』で紫式部 光源氏に云わせた言葉
「大和魂」『源氏物語』が出典だと云つてよい

『源氏物語』「乙女」ノ巻
光源氏 嫡男夕霧に 文學の教育 受けさせる
母方 左大臣家の祖母はじめ親族 猛反対
天子はじめ藤原氏や皇族出
高い貴族の子女 古来より漢學が最も大切な教育
行政マンとしての法律・技術の高い知識 

光源氏 反対を押し切る
コレ 紫式部の心情であつた

この頃 「和魂洋才」 流行語大賞
和魂→大和魂 洋才→漢学

紫式部の世の潮流
「漢才(唐才)を學んだ博士より
大和魂(やまとごころ)を身に着けた方がカッコいい
上流貴族の女房 そう考へるようになる

それは「まなび」と「あそび」の違ひ
「まなび」は真似
「あそび」は歌をうたい 語りごとを語つて
その内に籠められる魂を伝へること
魂の活性化

ヨーロッパのルネッサンス(復興文化)より
二世紀も早く日ノ本で起きた
和歌(大和歌)ルネッサンス
表音文字<かな文字>ができたのも このころだ


平城京以前 宮廷・朝廷で盛んだつた
和歌が再び脚光を浴びるようになる
その聖典が『万葉集』
2023/03/08(水) 晴れ


さて 次 何にするか


パイプの煙 紫煙立ち昇つていく
家康の次 さて 何にするか
立ち昇つていく紫煙
眺めながら 記憶のドア 叩く

三年前からになるか
まづ  「土方歳三と函館戰争」
つづいて「西郷隆盛と西南戰争」
そして 「織田信長」/「宮本武蔵」/「山本定朝と『葉隠』」
さらに 「新渡戸稲造」/「紫式部」
さう 再来年の大河 紫式部と決まつたからだ

平安時代から「北條早雲」へ
「俳句(芭蕉 蕪村)」から「鎌倉幕府」へ
「鎌倉殿の十三人」スタートと同時か
応仁の乱を飛び越して「戰國時代」へ

日ノ本初の異国に占領された
「大東亜戰争(坂井三郎)」
白人種が仕掛けた大東亜戰争 その因の
「黄禍{こうか}論」

死は存在しない―最先端量子科学が示す新たな仮説
触発されて
『バルド・トゥドル 三万年前 チベット仏教』
そして大河 はじまり「家康」と來たもんだ
「どうする家康」
あと十ヵ月 だらだらとつづけるのだらう

立ち昇つていく紫煙 眺めながら
さて 次 何にするか
2023/03/07(火) 晴れ


家康 最期の叫び


家康の死因
鯛の天ぷらにあたるとされる

家康 駿河・田中で鷹狩り
そこへ茶屋四郎次郎 ご機嫌の伺ひ
上方の商人{あきんど} 茶人流行り 伝へる

鯛を胡麻油で揚げ それに大蒜{にんに}をすりかけて食べる
家康 帰城し 
大鯛二匹 甘鯛三匹 天ぷらにし食し 腹痛がおきる
これが死への引き金になつたとされる

家康 死んだ日
鯛の天ぷら 食べてから三ヵ月後
実は家康 胃癌だつた
茶屋四郎次郎
家康 体調良からずと聞き 
天ぷらが滋養に良いとの助言であつた

家康 死を予感
己の葬儀の仕方 日光山への祭祀 こまごまと指図

秀忠 枕元に呼び
「わしが死んだら 諸大名 三年間 江戸に留め
よく動向を見張れ もし不穏な動くがあれば すぐ成敗せよ」

秀忠 云ふ
「私は諸大名を領国に帰します
そして一両年 休息を与へたうえで江戸に参勤させます
そのとき 籠城して反抗する大名があれば 出陣して踏み潰します」
家康 喜ぶ
「その言葉 聞きたかった これで安心だ」

また他日
駿河町奉行を呼び 伝家の名劍を手渡し
罪人斬りを命じる
戻つてきた 一番 斬れ味のよい劍を受け取ると
「これを わが子孫の鎮護の劍とせよ」

家康 生と死のはざま 長い年月 生き抜いてきた
心からの 最期の叫びだつた

これをもつて
裏店の傘張り浪人 「どうした家康」
筆を擱{お}く
2023/03/06(月) 晴れ


武道通信かわら版 配信日


迫り来る 極度の人口減少
東京オリンピック 明るみになる極悪談合
粉末タリウム投入 極悪非道 女子大生殺人事件

ニュース 途切れることなく流れる

百年後 どんな事件 おこるか
百年後の人
いまの世の
共同認識 コモンセンス
共有できていなれば わからないに等しい

『源氏物語』
文章から[香り」は嗅ぐことできない
着物に焚かれた香の[香り」を嗅ぐことができない
紫式部の世の人
『源氏物語』を讀む人は
文章から[香り」を嗅ぐことができた
焚かれた香の[香り」を嗅ぐことができない
恋物語 実感できた 

いまの世の人
現代文 讀んでも もし原文を讀めたとしても
着物に焚かれた香の[香り」を嗅ぐことができない
『源氏物語』の[香り]が立ちのぼることはない
2023/03/05(日) 晴れ


徳川埋蔵金


ひと昔前 某コピーラーター
徳川埋蔵金を探し TVと組んで
一所懸命 探してゐた

発端は
江戸城 無血開城
金がなかつた明治新政府 幕府御用金を当てにしてゐた
ところがドッコイ 城内の金蔵は空ッポ
幕府が隠匿したんだと 御用金探しが始まつた
実は もう たいして残つていなかつたのだ

四百万両なんて妄想は
家康の遺産金額からであらう

家康 駿府城に二百万両 江戸城には四百万両
どのような方法で膨大な金銀を蓄えたのか

金・銀山である

関ヶ原の戰ひで勝つたあと
佐渡 石見 生野の金銀山を直轄地に
新たに伊豆の銀山を掘り起こし
翌年 伏見の銀貨鋳造所(銀座)をつくる
金・銀・銭の三つの鋳造権 独占

「家康はJAPANで一番 裕福な君主
巨額な金銀を集めてゐる
数ヵ月前 伏見の梁が その重みで折れ
一室が陥没した」
『耶蘇会年報』で報告してゐる

膨大な金銀を蓄えには
佐渡金山奉行 大久保長安の働きが大きい
水銀を鉱石に接触させ 金銀を回収する混汞{こんこう}法
という外来の技術を取り入れる

ところが これほど家康に貢献した長安 病死
すると家康 生前 不正を働いていたと
長安の遺産を没収 七人の男子に切腹させた
それにが理由{わけ}がある
それはいい 幕府軍用金だ

一部 軍用金は舟に乗って 沼津湾についた
沼津兵学校 設立資金
2023/03/04(土) 晴れ


大久保忠俊{ただよし}


一向一揆 枯れすすき
♪家康に負けた〜
 いいえ 忠俊{ただよし}に負けた〜

和議 膠着状態
そのとき御年七十歳の古老家臣
大久保忠俊}
家康の祖父/父 そして家康 
三代にわたっての仕へた重臣中の重臣

忠俊 家康に直訴
「息子 眼を射抜かれ 甥も眼を射抜かれ
他の子らも傷を受けない者はゐない」
一向一揆の激しさを語り終へた
そして 最後に
「拙者の子らの辛苦の分だと察していただき
一揆を企ては者たちの命をお助けくだされ
そうでなければ三河は二分いたします」
ご不満はあろうが 和議を結ばれよ」

家康 忠俊の言葉には逆らへなかった
浄珠院(じょうしゅいん)で起請文 取り交わし 和議成立

メデタシメデタシ
とはいかなかつた
家康 態度一変
一揆を引き起こした寺 改宗を迫られた
NOと云えば 寺内を打ち壊し 僧は追放
約束が違う 起請文を持ち出し
守護使不入{しゅごしふにゅう}は守ると云つたではないか

家康 堂塔の打ち壊しはじめる
「以前は野原だった もとの野原にせよ」

一揆についた者 許す これも反故
一部の家臣は許されたものの
本多正信 渡辺秀綱 鳥居忠広らは追放

忠俊 家康の子供のころから知つてゐる
家康の性分 百も承知

一旦 和議するポーズで
一揆勢を分裂させる
忠俊の策であつた

♪家康に負けた〜
 いいえ 忠俊{ただよし}に負けた〜
2023/03/03(金) 晴れ


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